遠野の里

遠野、民話のふるさと。河童と座敷童が息づく里

岩手県の内陸、山々に囲まれた盆地に広がる遠野(とおの)は、「民話のふるさと」として知られる里です。河童(かっぱ)や座敷童(ざしきわらし)、神隠し——民俗学者・柳田國男が著した『遠野物語』には、この地に語り継がれてきた不思議な物語が記されています。茅葺きの家、清らかな川、のどかな田園。昔話の世界が今も息づく、遠野をご案内します。

「願わくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ」——『遠野物語』が伝えるのは、自然と人とが隣り合って生きた、もうひとつの日本です。

遠野物語と、民話の世界

明治の終わり、柳田國男が遠野出身の語り手から聞いた話をまとめた『遠野物語』は、日本の民俗学の出発点となった名著です。そこには、川に住む河童、家に富をもたらす座敷童、山の神や天狗など、人々が自然への畏れとともに語り継いできた物語が、生き生きと描かれています。遠野では、こうした昔話が今も大切に守られ、「語り部」と呼ばれる人々が、囲炉裏端で素朴な言葉で物語を聞かせてくれます。耳を傾けていると、昔の人々が見ていた世界が、ふと身近に感じられます。

遠野の曲り家
母屋と馬屋がつながる曲り家。遠野の暮らしの形。

見どころ|昔話の舞台をめぐる

遠野には、物語の舞台となった場所や、昔ながらの暮らしを伝える施設が点在しています。のんびりとめぐるのがおすすめです。

  • カッパ淵— 河童が住むと伝わる、木陰の静かな淵。
  • 遠野ふるさと村— 茅葺きの曲り家が並ぶ、昔の里山の再現。
  • 伝承園・語り部— 民話を聞き、遠野の文化に触れられる。

カッパ淵では、今も河童が出るといわれ、淵のほとりには小さな祠が祀られています。きゅうりを餌につけた「カッパ釣り」の竿が用意されているのも、遊び心にあふれていて楽しいもの。木々が水面に影を落とす静かな淵に立つと、ほんとうに何かがひそんでいそうな、不思議な気配を感じます。理屈では割り切れない物語を、頭から否定せず、そっと信じてみる——遠野には、そんなおおらかな心の余白が、今も残っています。

曲り家と、里山の暮らし

遠野の里を歩くと、母屋とL字型につながった独特の家「曲り家(まがりや)」を目にします。これは、馬を家族同然に大切にしてきた遠野ならではの住まいで、母屋と馬屋がひとつ屋根の下にあります。人と馬が寄り添って暮らした、かつての里山の風景がここにあります。遠野では、ジンギスカンや、どぶろくといった素朴な食文化も親しまれてきました。山々に抱かれた田園をめぐり、語り部の話に耳を傾け、昔ながらの暮らしに触れる——遠野は、心の奥にあるふるさとを思い出させてくれる場所です。

めぐり方と、アクセス

遠野へは、JR釜石線の遠野駅が拠点です。盛岡や花巻から列車でアクセスできます。見どころは点在しているので、レンタサイクルや車があるとめぐりやすいでしょう。語り部による民話は、伝承園などで聞くことができます。新緑や紅葉、稲穂の実る季節など、里山の風景は一年を通して美しく移ろいます。花巻や平泉とあわせて、岩手の旅に、物語の里・遠野を加えてみてください。

旅のメモ

エリア
岩手県遠野市
見どころ
カッパ淵・遠野ふるさと村・伝承園
名物
ジンギスカン・どぶろく・民話
あわせて
花巻・平泉と
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